第十八夜:2夜連続 非球面レンズについてもう少し丁寧に

第十七夜で少し触れた「非球面レンズ」について、もう少し突っ込んでみます。

今回参考にしたのは、2002年に公開されたニコンの「非球面レンズの製造方法(P2002-321144A)」という特許です。

ついでに言うと、私の專門は化学です。なので普段の仕事や勉強は「高分子が~」とか、「芳香族アミンが~」とかやってるんですけど、実はこっちの分野のほうが好きなんですよね。

カメラメーカーとかレンズをつくっている会社の特許を読んで、手持ちのカメラやレンズを眺めたり、情報収集したりしています。

こんなことやってるから翻訳講座の先生に「趣味の勉強はやめなさい」って怒られるんですよね(苦笑)

ま、それは置いといて。

まずは、「球面レンズ」と「非球面レンズ」の違いですね。

「球面レンズ」と「非球面レンズ」の違い
例によって手描きですが、形の違いを分かってもらえますかね。上の球面レンズは、光の焦点が2つありますよね。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、あるんです(苦笑)

その2点の差が「球面収差」と呼ばれるものです。それが下の非球面レンズだと、光が一箇所に集まるんですね。非球面にすることで、光の透過率の向上や光学レンズの厚みを薄くできるなどの効果があります。

「球面レンズ」と「非球面レンズ」の違い 写真
こうやってみるとわかりやすいですよね。この球面じゃない、非球面をつくるのが難しいんです。ただの球面ならそのまま研磨していけばいいんですけど、非球面のように複雑な表面形状だとそうはいかないんですよ。

表面の研磨の精度をあげて、その精度を保ちつつ、研磨時間を短縮するというニコンの特許を見ていきたいと思います。

これは従来の研磨工程です。

従来の研磨工程 特許

で、こっちがニコンが特許をとった研磨工程。明らかに工程が増えていますけど……これで本当に時間短縮ができるのかって思ってしまいますよね。

ニコンの特許
特許明細書の請求項を見てみると、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
 非球面レンズの製造方法において、研削により被加工物に第一の非球面形状を形成する非球面研削工程と、前記非球面研削工程により前記第一の非球面に生じた亀裂を除去するためのピット取り研磨工程と、前記非球面研削工程により前記第一の非球面に生じたうねりを除去するためのうねり取り研磨工程と、部分的に修正研磨を行うことにより前記被加工物に第二の非球面形状を形成する部分修正研磨工程とを有することを特徴とする非球面レンズの製造方法。

と、あります。そのまんまですね(苦笑)

なので、特許明細書と照らし合わせながら工程を1つ1つ分解してみていくことにします。

近似球面加工工程

光学ガラスを第一の非球面形状に近似した形状(近似球面と呼ぶ)に加工する(S01)。第一の非球面形状は、最終的な非球面光学レンズの外形形状である第二の非球面形状とほぼ同じ形状である。ただし、非球面研削工程終了時における第一の非球面形状の表面精度及び外形形状の加工誤差が、第二の非球面形状で目標としている表面精度及び加工誤差よりも大きくてもよい。

→この工程である程度の形をつくってしまうんですね。ただし、最終的な非球面レンズに近い形までもっていくんだけど、表面精度の加工誤差は理論値よりも大きくなってよいと。ここでは、表面の精度はあまり問わないようです

非球面精研削工程

高精度精密研削装置を用いて、非球面研削加工を行う(S02)。研削工具は、ダイヤモンド・レジンボンド砥石を用いる。被加工物である光学ガラスを回転させ、その光学ガラスに対して第一の非球面形状に沿って前記砥石を回転させながら走査し、第一の非球面外形形状を削り出す。

→「高精度精密研削装置」っていう研削装置に研削工具(ここではダイヤモンド・レジンボンド)を取り付けて、ガラスを削っていく工程です。イメージとしては、下記のような感じ。

高精度精密研削装置
ダイヤモンド・レジンボンド砥石は、簡単に言うと「レジン=樹脂でできたダイヤモンドホイール」のことです。当然ながらつくるレンズごとにホイールを変えたりもします。

ダイヤモンド工具は、切削性能が高いので作業時間の短縮が図れます。

ピット取り研磨工程

さらに、非球面研削工程により生じたピットを、ピット取り研磨により除去する(S03)。ピット取り研磨では、ポリシャとして発泡ポリウレタンを使用した研磨工具を用いる。この研磨工具を3次元研磨装置に取り付け、非球面切削工程で研削された第一の非球面形状の光学ガラスを研磨する。発泡ポリウレタンのような軟質弾性体は、非球面形状に良くフィットするため、表面の凹凸に対しても一様な研磨ができる。これにより、非球面研削工程で生じたピットを除去することができる。

→ピット(ガラスの表面を削る際に生じる微小な亀裂)部分を研磨する工程です。「ポリシャ」とありますが、「ポリッシャー」のことですね。あの、洗車なんかに使われるスポンジみたいなものです。これを研磨装置に取り付けて、上で研削したガラスの表面を研磨してピットを除去していきます。
長くなってきましたので、残りの工程は次回。

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