第十九夜:2夜連続 非球面レンズについてもう少し丁寧に

第十八夜の続きです。前回「ピット取り研磨工程」まで終わったので、「うねり取り研磨工程」からですね。

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うねり取り研磨工程

【0024】ピット取り研磨の後にうねり取り研磨を行う(S04)。うねり取り研磨は、ポリシャとして粘弾性体(ピッチ)を使用した研磨工具を用いる。この研磨工具を3次元研磨装置に取り付け、ピット取り研磨後の光学ガラスの研磨を行う。これにより、非球面研削工程で生じたうねりと工具痕を除去することができる。

→「ピッチ」とはコールタールのことです。黒くて、どろっとしています。松やにを混ぜてあることもあります。このピッチを塗った(浸した)研磨工具を、研磨装置に取り付けて研磨し、うねりや工具痕を除去していきます。

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研磨後のレンズです。すごく綺麗ですよね。こういうのを見るとドキドキします。

研磨後のレンズ ニコン公式サイトより出典:ニコン公式サイト

計測

【0025】この後、形状計測を行う(S05)。

→ここでは、どういった測定器を使うかなどは書かれていませんが、たとえばこんな感じで形状を測定します。

アメテック株式会社出典:アメテック株式会社

部分修正研磨工程

この計測結果を基に、スモールツールを用いて、部分修正研磨工程を行う(S06)。研磨する部分は、計測結果から算出する。この算出した値を基に、NCプログラムを行い、スモールツールの研磨の制御を行う。また、この部分修正研磨では、表面精度の低い部分を選択的に研磨することにより、表面精度の向上も行う。

→「スモールツール」とは、たとえば京セラのこんなツール。NCプログラムは数値制御(numerical control)のことで、数値をコンピュータで制御するためのプログラムのことです。

上で説明した計測の結果を基に、表面精度が低い(ピットとかうねりなどが残っている)部分だけをピンポイントでNCプログラムでコントロールされたスモールツールを使って研磨すると言っています。

加工完

【0026】部分修正研磨工程終了後に形状計測を行う。その結果、第二の非球面形状に対しての形状誤差が目標規格内であった場合は、加工完である(S07)。形状誤差が目標規格外であれば、再度部分修正研磨を行い、形状誤差が目標規格内になるまで、S05→S06の操作を繰り返す。

→部分的な修正が終わったら、再度形状計測して、OKなら加工完了です。NGであれば、OKになるまで、計測~部分修正研磨を繰り返して、目標規格内の形状にしていきます。

こういう技術がなかった頃は、ほとんどが手作業だったんですよねぇ。レンズの値段が高いのも頷けます。大量生産ができず、時間も労力もかかっていたわけですから。

今でも計測~部分修正研磨の工程は、人の手でおこなっているところもあります。機械では決められた(プログラミングされた)ことしかできなけど、人の手と感覚なら融通が効くということですね。熟練の技です。かっこいい。

【0027】これらの工程の中で、ピット取り研磨工程をうねり取り研磨工程の前に行うことが重要である。

→この特許のポイントの1つのようです。

非球面研削後 特許明細書

【0030】以上のように、うなり取り研磨工程をピット取り研磨工程の前に行うと、被加工物の表面にはピットの残留や工具痕やうねりの凹凸が残る。これらの凹凸は表面精度を低下させる。したがって、表面精度を高くするためには、ピット取り研磨工程はうねり取り研磨工程の前に行う必要がある。

先に、上の図のようにピット取りをしてから、うねり取りの研磨工程をおこなえば表面精度が高くなると言っています。

スモールツールで研磨できる面積は狭いんですよね。なんせ小型の工具なので(苦笑)研磨で除去できる体積も少ないですし。

なので、研磨するべき面積が広い場合や、研磨で除去する量が多い形状の場合だと研磨時間が長くかかり効率が悪いんです。

そこで、下の従来の工程のように、非球面精研削工程からいきなり部分修正研磨工程にいくよりも、「ピット取り」と「うねり取り」をすることで、結果部分修正にかかる時間が短縮し、効率が上がるということなんですね。うまくいけば、「うねり取り」をした後、計測して問題なければ加工完了ですし。

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いかがでしたか?

非球面レンズを製造する工程の流れは、だいたいわかっていただけたでしょうか?

製造工程などを知ると、手持ちのレンズが愛おしく思えてくるんですよね(笑)

みなさんも、そう思ってくれたら嬉しいです。

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